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塾長のコラム

くらじゅく通信の創刊

自己表現
◆自己表現ということばを聞いたのは
 
私が自己表現という言葉を意識して聞いたのは、無気力な学力不振児について相談するため、甲南大学心理学教室の森先生を訪ねたときのことであった。無気力な子どもに共通するのは自己表現することが欠けており、その治療法の一つとして箱庭作りがある。作るという行為(表現)を通して、自分を意識するというものであった。もっと大切なことは、その子どもに何でもよいから話をさせる(言葉による表現)ことである。

◆スポーツは自己表現の一つ
 
そんな話の中で、私が宮古島トライアスロンを目指して練習をしているというと、「阿納さん、それはトライアスロンというスポーツを通じて自己表現をしているのですよ。自己表現ができている人はきちんと生きていけますよ。」という言葉が返ってきた。今までスポーツを自己表現とは思っていなかった私には、目からうろこの考えであった。しかし、自分では気づいていなくてもそう考えていた節があった。

◆私はトライアスロンで自己表現をしている
 
宮古島トライアスロン大会(水泳3km・バイク155km・ラン42.195km)に出場するために大会長あてに書いたメッセージの一文にこう書いていた。
「宮古島大会のフィニッシュシーンを3年連続テレビで見ました。全く偶然だったので不思議でした。妻をがんで亡くして、何をしていいかわからなくなっていた私には、これしかないと考えるのに時間はかかりませんでした。したがって宮古島大会は、私がトライアスロンを始めたきっかけであり、原点です。」確かに私は「生きる」ためにトライアスロンをやっている。以来スポーツはすべて自己表現をしているのだという考えが自分自身の生活の根幹となった。

◆荻原健司選手からのメッセージ
 
今年の成人の日のメッセージの中で「スポーツで自己表現をしている」と語っていたのは、日本ではあまりなじみのなかったノルディック競技を日のあたる場所に押し上げた萩原健司選手であった。彼にも脚光を浴びるまでの長い下積み時代があった。彼を見た一人のファンから「萩原さんの競技に対するひたむきな姿に感動した」という手紙をもらってから、彼は大きな変身を遂げる。「自分は人に何かを伝えている。スポーツを通して自己表現している。」と感じ、それ以来、練習に対する姿勢が変わり、めざましい進歩をとげる。1992年アルベールビル五輪、94年リレハンメル五輪と団体2連覇。92年―93年シーズンからW杯個人総合3連覇。W杯だけでは歴代2位の通算19勝という輝かしい戦歴を残す。ヨーロッパでは「オギワラ」の名を知らない人はないくらいの超有名人である。

◆スポーツに対する一つの考え方
 
人はちょっとしたきっかけで開眼する。それを何かの「きざし」ととらえるかとらえないかの差である。そしてその「きざし」をあたえてくれるのは神かもしれない。
  人間は他の動物と違って、本能だけでは生きていけない。自己表現することで自分の生きるバランスをとっている。健康のためのスポーツと考えるだけではなく、自己表現(生きていくための)スポーツと考えれば、死ぬまでスポーツはできる。それが私がトライアスロンをはじめ、スキーなどのスポーツをやり続ける大きな原動力となっている。

               (くらじゅく通信2003年3・4月より)

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