[EQ 読書 学習塾]苦楽園読書くらぶ
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塾長のコラム

どんぐり

◆どんぐりとの出会い
  最近、山歩きを始めた。ある日六甲山からの帰り道、荒地山のナマズ石(阪神大震災の時に頂上より落下した五百トンの巨大石)の前にザルカゴがありその中に大きいドングリが数十個はいっていた。その横には「ドングリを持ち帰って植え、緑をふやそう。」と言う主旨と植え方の方法が書いてあった。3個持ち帰り2個を知人にあげ、1個だけ手もとに残した。

◆いつ発芽するのか?
  11月の初旬に鉢に植え陽のよくあたる2階のベランダに置いた。それから毎日水やりをし、発芽するのを今か今かと楽しみにしていたが、一向に発芽してくる気配がない。そのうち寒くなってきたので台所のガラス越しの陽あたりがよい場所に置いて、水やりだけは欠かさなかった。もう発芽しないのだと思ってあきらめていた矢先、二月の中旬ごろ数ミリの芽がでているのを発見。実がパクリと割れたところから芽が出ていた。今では10cm位の茎を勢いよくのばしている。

◆時期がくれば芽が出る!
  自然はドングリの実が木から落下し、冬の間木々から落ちた枯れ葉に守られながら発芽する時期がくるまでしんぼう強く、もう発芽しないのだとあきらめることなく待ってくれているのだろう。私はどうだ。芽がでることを途中であきらめていた。この経験を通じておおぜいの子どもをあずかる塾人としての立場から、いつ子どもの芽がでるのだろうと思うあまり「結論を急ぎすぎていないか」「子どもを急がしていないか」と自問するいい機会になった。

◆お遍路での体験
  これは昨年の夏、自転車で四国八十八ヶ所のお遍路を巡ったときに感じたこととだぶる。秋にお遍路を二周半しておられる方と、偶然会う機会があった。話をしていると、お寺に関しては話ができるが、お寺とお寺の道中については全く話がかみ合わない。そしてその原因が自転車と歩きという移動手段のちがいにあることに気がついた。自転車のスピードは時速20〜25キロ。歩きは4〜5キロ。自転車のスピードでは、いろんなことを見落としてしまうのは当たり前である。自動車ではなおさらのことであろう。

◆歩くこと・時間をかけることの意味
  道端に生えている可憐な花、楽しそうにさえずる鳥の声、風がはこんでくる草木のにおい、田舎のにおいを感じながら歩く。なによりも弘法大師と同じ道を歩いているという一体感。歩くことの方が圧倒的に情報量が多い。歩くことは時間がかかるが、それに比例して感性を豊かに、鋭くする。歩きお遍路にこだわる人が多いことのひとつにはこういった理由があるからなのだろう。

◆教育にたずさわる者として
  今の教育は結果ばかりを気にして、効率優先の自転車や自動車でお遍路巡りをしていることと同じではないかと。急ぐことにより失っていることが多いのではないか。結果よりその過程を大切にする。一所懸命努力することを評価する。教育の目的が子どもの人としての成長、豊かな感性を磨くことだとすれば歩く方がいい。急がずじっくり時間をかけ子どもが自分自身を育む環境を整え、ドングリのようにいつか芽のでることを信じる。芽がでるには時間が必要だとドングリが教えてくれた。教えるだけの一方通行に陥ることなく、子どもの芽を大切に育んでいくことを胆に銘じ歩を進めたい。

                 (くらじゅく通信2005年3・4月号より)

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