子どもを読書好きにする苦楽園読書くらぶ

読書スピードと学力

読書スピードと学力

西宮の塾での経験

2人の中3生にまつわる話です。A君は常時学年で5番以内に入る塾生。B君は学年で50番以内に入る塾生でした。定期テスト、学力テストともに総合得点では、A君がB君を上回っていました。しかし、こと国語に関しては、定期テストではそれほど得点はかわらなかったのですが、学力テストでは常にB君はA君を上回っていました。

思いつく理由といえば、B君は親の影響もあって、試験期間中でも本を読むという大変な読書家だったのです。それ程勉強をしていないようでしたが、まずまずの成績を取っていました。定期テストは試験範囲があるので、前もって準備ができます。しかし、学力テストでは今まで読んだことのない文章を読むことになり、国語の本当の実力が分かります。

こと国語に関しては、実力のあるA君でも読書家のB君にはかなわなかったのです。B君が本気で勉強に取り組めば、他の教科もおそらくA君を抜いていたでしょう。

私自身にも中学生の時、同じような経験があります。クラスで1番になろうとしても越えられない壁がありました。その壁とは、やはり読書家の女の子でした。この子も。それほど勉強をしているようには見えなかったのですが、よくできていました。

皆さんのまわりを見渡してみると、このような子どもが1人や2人いないでしょうか?

学力は読書スピードの差?!

読書は子どもの感性、感受性等の情緒面を豊かにするものというものの考え方が一般的です。しかし、私は、それが目的ではなく結果として得られるものという、考えをもっています。読書には「国語力をつける」ことはもちろんのこと、「学習するのに必要な、読むスピードを上げる」ためのトレーニングになっているという、もう一つの大切な側面があると考えています。

その考えについて、これから説明していきます。

まず、岸本裕史氏(元小学校教諭:「すべてのこどもに確かな学力を」等多くの著書がある。)が、小学一年生と六年生を対象に、知っている言葉の数と成績の関係を調べた、非常に興味深い次のようなデータがあります。このデータはどくしょ通信36号に掲載したものと同じです。

(表)語彙数と成績の関係
語彙数と成績の関係

この表からも分かる様に、両学年とも上位と下位では、語彙数で3倍以上(*参照)の差が認められます。この結果、「知っている言葉の数の多い子供ほど、成績がよい」という傾向が明らかにされたのです。さらに、「読書量の多い子供ほど、成績がよい」というデータも出ています。

もちろん、学校の成績だけで子供の能力を測ることはできませんが、岸本氏の調査は、すくなくとも成績のよい子供ほど、知っている言葉の数が多く、読書量も多いことをはっきり表しています。
(以上「石井式で漢字力国語力が驚くほど伸びる」第1章(石井 勲・コスモトゥーワン)より抜粋)

このレポートには読書スピードのことは書かれていませんが、次のことが推論できます。つまり、読書量が多いことは語彙の量が増えるにとどまらず、数多く本に親しむことで、読書スピードも自然に速くなると考えられます。語彙の量が豊富であれば、本に書いてあることがよく理解でき、本が速く読めます。そして、ますます、多くの本を読みます。したがって、読書量が多い子どもは下図のような良好なサイクルでますます読書スピードを上げることになるのです。


(図1)多読による良好なサイクル
多読による良好なサイクル

語彙の多い子どもは、先生の説明をその豊富な語彙ですばやく理解できます。逆に語彙の少ない子どもは理解するのに時間がかります。それと、読書スピードが上がっているということは、追唱のスピードも上がっていることになります。(逆に追唱のスピードを上げれば、読書スピードは上がります。これは、読書くらぶでの経験則です。)また、追唱のスピードが速いと、先生の話すことが余裕をもって聴けます。このように学習に対して、多くの良い条件が重なるのですから、成績が良くなるのは当たり前ですね。

ここで、よくでてくる「追唱(ついしょう)」について説明します。追唱とは、人と話す時、相手の言った言葉を頭の中でそっくり繰り返しているのが追唱です。耳から入ってきた音声は追唱により大脳の左半球(言語中枢)にある「ウェルニッケ中枢」で言語として理解され、その言語情報が記憶や知覚、認識、運動の領域へ送られます。したがって追唱のできない人は記憶のできない人ということになります。また読書をしているときも、文字情報を目から大脳の視覚野を経て「ウェルニッケ中枢」で音声化してそれを追唱しているのです。したがって、

追唱のスピードが読書のスピードを決定することになります。

「読書好きの子どもはおしなべて学力が高い」とはだれもが認める事実です。そこで、学力の差は読書スピードの差に起因しているのではないか、という仮説が立てられます。 一方、読書の苦手な子どもは、本の読み方を知らないまま、本を読むことを強いられています。ですから、子どもはますます本から遠ざかり、読書スピードは上がるどころか、さらに遅くなります。そして、誰にも指摘されることなく、本を読むのが遅いまま大人になってしまうのです。

読書スピードと学力との相関について

学力の差は読書スピードの差に起因しているのではと述べましたが、それを実証している例として、大学入試の合格者の読書スピードについての調査があります。日本人成人の平均の読書スピードは分速500字~600字程度です。一方、超難関大学といわれている東大、京大、早稲田、慶応などの大学合格者の読書スピードは分速1500字~2000字程度です。

単純に3倍程度、読書スピードが違うのです。

学校のテスト・入学試験・資格試験等すべての試験においても、読むスピード(読むスピードは読書スピードと同じと考えていいと思います。)はとても重要なファクターとなります。合否の成否を分けているといっても過言ではないでしょう。それは、試験勉強に時間的制約があるからです。読むスピードが速ければ、それだけ多くの文章つまり教材や参考書を読むことができます。

例えば、読むスピードが3倍になると、学習量も3倍にすることが可能です。また、今までより速く処理できるようになると、同じ時間でも繰り返し学習ができるため、記憶を定着させ、理解力を上げることができます。これまで1回しかできなかったものが、3回学習できます。         
また、当日の試験においても、読むスピードは大きな影響を与えます。例えば、現代の大学の試験問題は、難易度は中の上くらいで、問題の量を多くしているのが主流です。これは、問題をいたずらに難しくして、マニアックな人を合格させるよりも、一定の難易度の問題を大量に処理できる人を合格させるためです。

なぜなら、大学ではおびただしい数の文献と取り組まなければならないのですから、読むスピードが遅くては話になりません。「学生が新聞すら読まない。」と大学の教授がなげくのは当たり前ですね。ところが、、難関大学の試験になればなるほど、問題の文字数が増えてきます。大量の問題を短時間で処理できるかどうかが合否の分かれ目になるのです。中学・高校の入試についても同様のことが言えるでしょう。特に私立中学入試では国語問題の長文化が顕著です。

今まで教育現場では「読むスピードと学習の関係」について考察されてこなかった。そもそも読むスピードにあまり意識が向いていなかったからでしょう。しかし、こうして考えてくると、読むスピードが学習の面で重要な要因になっていることは確かなようです。

そして言うまでもなく、その読むスピードを速くするには、読書が最適です。先に述べた多読による良好なサイクルで、読むスピードは格段に上がるはずです。算数や数学ではその基礎となる計算問題を繰り返し練習します。国語では、それにあたるのが読書です。教科書だけでは、圧倒的に練習のための文字数が足らないのです。繰り返し練習しなければなりません。もちろん、読書は子どもの心を豊かにし、情緒面の成長の糧になります。しかし一方で、

読書スピードが、学習をするうえで重要な要因になっていることに、もっと注目すべきだと思います。

もう一つ、小・中・高校生の1か月の平均読書冊数の注目すべきデータがあります。全国学校図書館協議会と毎日新聞社が毎年5月に実施している「読書調査」(ここでは2006年のデータ)ですが、

小学生9.7冊に対して中学生2.8冊、高校生1.5冊となっています。

この調査では、調査対象の1カ月間に1冊も読んでいない児童・生徒の数も同時に調べていますが、

1カ月間に1冊も読んでいない児童・生徒の数は小学生6.0%、中学生22.7%、高校生50.2%となっています。

このデータでは、一時の読書ばなれから脱したと結論づけています。2001年12月に施行された「子どもの読書活動の推進に関する法律」で関係教育機関が様々な施策を講じたからだろうと考えられます。それでもなお、中学生、高校生の読書量は明らかに少ないと思われます。クラブ活動・受験に必要な勉強に時間が取られているからでしょう。

これで、受験に十分な読書スピードを育成できるでしょうか?

受験に必要な読書スピードとは

次に、受験に必要な読書スピードとはどのようなものか、見てみましょう。小・中学生の読書スピード(1分間で読める文字数で表す)は平均で約400~600文字/分と言われています。試験では限られた時間での中で、問題文を読み、解答を考え、答案を作成する作業を行ないます。

例えば、ある公立中学3年生定期テストの国語問題の文字数は、8,000字とします。もし読書スピード400文字/分の生徒がこの問題に取り組む場合、問題文を読むだけで20分かかり、解答を考え、答案を作成する時間は30分しかありません。さらに問題文を繰り返し2度読むとなるとその時間は10分になってしまいます。

一方、読書スピード800文字/分の人では、読む時間が10分、解答を考え、答案を作成する時間は40分になります。問題文を2度読むとしても、まだ30分残ります。読書スピード1200文字/分の生徒にいたっては問題文を2度読むとしても解答を考え、答案を作成する時間は実に36分以上に増え見直しの時間もたっぷりとれます。

有名私立中学になるとその入試問題の文字数は12,000文字にもおよび、読書スピード400文字/分の生徒の場合問題文を読むだけで30分かかります。2度読むとなると読むだけで解答する時間はなくなります。したがって、読書スピードの遅い多くの生徒は、問題文をしっかり読まないで、解答にあたることになります。一方1200文字/分の生徒は10分で問題文を読むことができ、2度読んでも40分の時間がのこり、余裕をもって解答に時間がとれます。このことを(表1)に示します。

単純に、読書速度スピードが3倍になれば、30分かかっていた読む時間が10分に短縮でき、その差の20分間を、しっかり考えて答えることができます。特に受験では、たとえ1分でも2分でも多く考える時間が増えるとそれだけ正答率が高くなり、非常に有利になります。

画像の説明

(表2)は大学センター試験における読み取りにかかる時間を示しています。最低でも800文字/分のスピードがないと問題文を読むだけで試験が終わっています。

画像の説明

読書スピードが速いと

読書だけでなく、次のように学習面全般で非常に有利になります。

  • 本を多読でき、ますます読書スピードが速くなる。
  • 追唱のスピードも速くなり、先生の説明・話が聴きやすいのでよく理解できる。
  • 学習時間が短縮できるので、同じ時間で繰り返し学習ができる。
  • 受験時、国語の長文に対応することができる。
  • 将来、社会に出たとき文章を読む上で困らない。現代のような知識社会では、多くの文字情報を速く処理できる能力が求められる

読書スピードを上げるには

それでは、読書スピード上げる方法について具体的に考えてみましょう。

(1)多読する・・・読書習慣が身についていることが前提である。

(2) 目のみを使った速読法・・・読書習慣が身についていることが前提である。トレーニングに時間がかり、しかも能動的でないと実現できない。

(3) 耳と目を使った速読法・・・読書習慣を作りながら、速読が身につけられる。朗読音声が読むことをリードしてくれるので、受動的。比較的短時間で読めるようになる。倍速音声を聴くことで追唱のスピードが上がる。「きく(※)」レベルが上がるので、先生の説明がよく理解できる。

(1)、(2)は時間のない中・高校生には現実的でありません。本をあまり読んでいない人には、むつかしいでしょう。(3)は読書くらぶがやっている読書方法です。小・中・高校生ともに多くの生徒が速読できるようになった実績があります。また、学習において大切なやる気、集中力等が育ちます。 しかも、追唱することで、文字情報を正確に得ることができます。

読書くらぶでの読書法はこの(3)の速読法で、追唱のトレーニングになっているのです。

※「きく」レベルには、「聞こえている」「聞く」「聴く」「傾聴する」のレベルがあります。学習のためには、「聴く」以上の「きく」レベルが必要です。

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